2026/06/15

「どうして自分はこんなに不安になりやすいのか」
「もっと心が強ければいいのに」
そうやって、自分を責めてしまうことはありませんか?
今では世界中で多くの人の心を救っている「認知行動療法(CBT)」ですが、その創始者であるアメリカの精神科医「アーロン・ベック(Aaron T. Beck)」も、実は皆さんと同じように、人知れず強い恐怖や不安と戦っていました。
このことは、1993年に心理学者マージョリー・ウェイシャー(Marjorie E. Weishaar)が著した伝記『Aaron T. Beck』や、ベックの娘であり後継者であるジュディス・ベック(Judith S. Beck)が「ベック研究所(Beck Institute)」の公式記録や著書の中で明かしています。
記録によれば、ベックは7歳のときに腕を骨折し、そこから重い敗血症にかかって生死を彷徨よいました。
この時の過酷な入院体験が、彼の脳に深い医療トラウマを植え付けてしまったのです。
そのため、ベックは研修医時代も「血や傷、手術室」を見ると、身体がすくみ、めまいを起こして倒れそうになるほどの強い「血液恐怖症」を、人知れず抱えていました。
さらに、ベックは「大勢の人前で話をすること」にも強い不安(社交不安)を抱えていたと、娘のジュディスは語っています。
高名な医師になってからも、学会発表の前には心臓が激しく波打ち、頭が真っ白になる恐怖と戦っていたのです。
普通なら「自分は医師に向いていない」と諦めてしまうかもしれませんが、ベックの偉大さは、自分自身のその「怖がりな心」を、最初の実験台にしたことでした。
手術室で血を見て強いめまいに襲われた際、ベックは頭の中で「私はここで気絶して、死んでしまうかもしれない」という極端な恐れのつぶやき(自動思考)が流れていることに気づきました。
そこで、あえて手術室から逃げ出さずに留まり、「本当に私は気絶するだろうか? 実際にその場で確かめてみよう」と、自分の身体を使って実験をしたのです。
結果、動悸は激しくなっても気絶することは一度もなく、「怖いけれど、実際には死なない」という現実のデータを脳に繰り返し上書きしていくことで、彼は自力で恐怖症を克服していきました。
これが、現在の認知行動療法で大切にされている、やってみて現実を確かめる「行動実験」という技法の原点となりました。
学会発表の不安に襲われた際も、ベックは「不安の波は、話し始めて数分すれば必ず下がっていく」という自身の身体データを客観的に観察することで、不安を排除するのではなく、受け入れながら大舞台に立ち続けることができたのです。
心理学の理論は、時に冷たく理屈っぽく聞こえることがあるかもしれません。
しかし、ジュディスが著書の中で語るように、認知行動療法は「どこかの完璧な天才が机の上でひらめいたものではない」のです。
血が怖くて倒れそうになり、スピーチの手前で震えていたひとりの人間が、自分を、そして目の前の患者さんを救うために泥臭く編み出した「血の通った、優しい心の処方箋」です。
もし今、あなたが何かに怯えていたり、完璧にできない自分を責めているなら、どうか思い出してください。
あのベックも、最初は怖くてたまらなかったのだと。
一歩ずつ、できることから現実を確かめていけば、心はいつでも新しく育んでいけますので、あなたのペースで、少しずつ安心を増やしていきましょう。
お問い合わせは、ホームページ「お問い合わせ」からお気軽にお声がけください。
Room Turn Blueは、あなたがあなた自身の優しい味方になりながら、一歩を踏み出すしなやかな歩みをいつも応援しています。
[ Room Turn Blue ~ ルームターンブルー ~ ]
臨床心理士 / 公認心理師 / キャリアコンサルタント / CEAP / EAPコンサルタント / CBT Therapist®︎ / CBT Therapist®︎ for Biz / CBT Extra Professional®︎
目白駅から徒歩2分
池袋駅から徒歩10分