2026/08/03

相手の表情を察し「お先にどうぞ」「お任せします」と優しく譲り合う。
日本人が持つこの「気遣い」の心は、人間関係を温かく保ち、豊かな和を生み出す本当に素晴らしい美徳です。
一方で、この美しい「気遣い」が、「誰も望んでいない結末」を生み出してしまうことがあるのです。
アメリカの心理学者ハーヴェイ(Jerry B. Harvey)が、40度を超える酷暑の日に、義理の実家で冷たいお茶を飲んで快適に過ごしていました。
そこへ義父が「50km先のアブリーンへ食事に行かないか」と提案し、家族全員が「行きましょう」と快諾しました。
エアコンの壊れた古い車で片道2時間もかけてアブリーンへ行き、やっとたどり着いた食堂では、美味しくもない料理を黙々と口に運んで、全員がぐったりと疲れ果てて帰ってきました。
帰宅後にハーヴェイが「実は行きたくなかった」と漏らすと、妻も義母も「私も本当は家にいたかった」と告白し、提案した義父までもが「みんなが退屈そうだと思って言っただけで 本当は自分も家にいたかった」と打ち明けたのでした。
つまり、全員が「相手のため」だと気遣い合っていたことが、結果として誰一人望んでいない最悪の選択をしていたのです。
これを「アブリーンのパラドックス」といい、全員が「自分以外のメンバーがそれを望んでいる」と勘違いし、誰も本心から望んでいない決定に全員で同意してしまうという集団の心理です。
では、「もっと自分の意見を言おう」とすると、今度は「それは自分勝手(わがまま)になるのでは?」と不安になるかもしれません。
ここで重要になるのが、心理学における「アサーション(アサーティブ・コミュニケーション)」という概念で、人のコミュニケーションを大きく3つに分類します。
・ 自分の意見を押し通す「攻撃的な態度(自分勝手)」
・ 自分の気持ちを押し殺す「非主張的な態度(過剰な遠慮)」
・ 自分も相手も同じように尊重する「アサーティブな態度」
「自分勝手」とは、相手の都合を無視して自分の意見を押し付けることで、自分の意見や本音を伝えること自体が「自分勝手」になるわけではありません。
一方で、アサーティブな表現とは「あなたの希望も大切だけれど、私の気持ちも大切にする」という、対等でしなやかな姿勢を指します。
「自分らしさ」を大切にするとは、わがままではなく、自分の本当の感情を自分自身で認めてあげることです。
「相手のため」と思って本音を隠すのではなく、「私はこう思う」「こうしてもらえると嬉しい」と小さな本音を差し出してみることで、相手にとっても「本当の希望」を知る助けになり、結果としてお互いを真に尊重し合うことにつながります。
気遣いができる優しい日本人だからこそ「自分を抑える気遣い」から「自分も相手も大切にする気遣い」に広げて、一人ひとりが自分の本当の気持ちを大切に、自分らしく生きられる社会にしていきたいですね。
周りに気を遣いすぎて、自分の本音や自分らしさが見えなくなってしまった方は、ホームページの「お問い合わせ」からお気軽にお声がけください。
自分も相手も心地よい関係性を、一緒に見つけていきましょう。
[Room Turn Blue ~ ルームターンブルー ~ ]
臨床心理士 / 公認心理師 / 国家資格キャリアコンサルタント
/ CEAP / EAPコンサルタント / 健康経営エキスパートアドバイザー /
CBT Therapist®︎ / CBT Therapist®︎ for Biz/ CBT Extra Professional ®︎
目白駅から徒歩2分
池袋駅から徒歩10分