2025/09/02
近年の少子高齢化や世帯構造の変化に伴い、要介護者を支える「ケアラー」の存在が、社会的な課題として認識されるようになりました。
日本ケアラー連盟によると、「ケアラー」とは、「心や体に不調のある家族や近親者、友人、知人などを無償でケアする人」と定義されています。
「ケアラー」は、年齢や性別に関係なく、誰にとっても、ある日突然、向き合うことになる現実であり、その世代や立場によって直面する課題が異なります。
1. ワーキングケアラー / ビジネスケアラー
働きながら介護をしている人全般を「ワーキングケアラー」といい、その中でも特に企業に勤める会社員に焦点を当てた言葉が「ビジネスケアラー」です。仕事と介護の両立に追われ、時間的な制約や肉体的・精神的な疲労に苦しみ、キャリアの中断や「介護離職」というリスクに直面して、経済的に追い詰められることも少なくありません。
2. ヤングケアラー
本来、大人が担うべき家事や家族の世話を日常的に行っている18歳未満の子どもたちをいいます。介護に時間を取られることで、睡眠不足や学業不振に陥るだけでなく、友人との関係を築く機会を失い、社会的に孤立しがちで、「自分がケアラーである」という自覚がないケースも多いために、問題が表面化しにくいという特徴があります。
3. 老老介護
高齢のケアラーが、高齢の家族を介護している状況です。介護者自身も高齢であるため、肉体的・精神的な負担は計り知れず、介護疲れから共倒れに陥る危険性が高いといえます。
4. ダブルケアラー
育児と介護という二つのケアを同時に担っている人で、主に30代〜40代の「働き盛り世代」に該当します。子どもの世話、仕事、親の介護という3つの役割を同時にこなすため、圧倒的に時間が不足し、精神的・肉体的な大きな負担に加え、育児と介護の両費用が重くのしかかります。
ちなみに、メディアで話題の「8050問題」も関連しています。
「8050問題」とは、80代の親が、ひきこもりや失業状態にある50代の子どもの生活を支えている状況を指しますが、この場合、親は「老老介護」の苦悩に加え、子どもの生活費と自身の生活費、さらに介護費用を捻出することになり、経済的に非常に厳しい状況に陥ります。
「ケアラー」は、「家族を自分の手で看たい」という愛情や責任感をもつ一方で、現実的な制約から「正直、介護は重荷だ」と感じてしまう自分に罪悪感を抱いてしまい、この葛藤が自身の心に大きな負担をかけてしまいます。
そして、その想いは、被介護者にも通じていて、「慣れ親しんだ自宅で過ごしたい」という願いを持つ一方で、「家族に迷惑をかけたくない」という思いを抱え、この「遠慮」が、必要な支援を求めない理由となって、結果的に家族の負担を重くしてしまうという悪循環が起こり得ます。
世代や背景は違っても、「ケアラー」たちが共通して抱える課題は「家族だけで問題を抱え込む」ことにあり、周囲に相談しづらかったり、制度の利用に抵抗を感じたりすることで、孤立を深めてしまいます。
この複雑な状況を乗り越えるためには、もはや「個人の努力」や「家族の愛情」だけでは限界があり、私たちは、介護を「家族の問題」から「社会全体で支える問題」へと捉え直す必要があります。
そして、それぞれの立場や想いを尊重しつつも、「ケアラー」を早急に社会全体で支え合う仕組みを構築していくことが、「家族の愛」を守り、誰もが安心して暮らせる社会への一歩となります。
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現代社会におけるコミュニケーション不足は、この状況をより深刻にさせている一因かもしれません。
[ Room Turn Blue ~ ルームターンブルー ~ ]
臨床心理士 / 公認心理師 / キャリアコンサルタント / CEAP / EAPコンサルタント / CBT Therapist®︎ / CBT Therapist®︎ for Biz / CBT Extra Professional ®︎
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